京都大原三千院
三千院は京都市大原の里にある天台宗の寺院です。粟田口の青蓮院、花園の妙心寺と並ぶ天台宗三大門跡寺院の一つです。門跡寺院とは、皇族や貴族が住職を務めた寺格の高い特別な寺院です。山号は魚山(ぎょざん)、御本尊として薬師如来をまつっています。
三千院の歴史
三千院の起源は、8世紀に、最澄が比叡山延暦寺内に建立した円融房(えんゆうぼう)が起源と言われます。円融房のそばに大きな梨の木があったので、後に「梨本門跡」と呼ばれるようになりました。
9世紀半ば、円融房は大津坂本に移されました。12世紀に堀河天皇第二皇子である最雲法親王が円融房に入られ、ここに加持祈祷(かじきとう)に用いる井戸(加持井)があったため、梶井宮(かじいのみや)と呼ばれました。最雲法親王は天台座主となられ、大原に梶井門跡の政所(まんどころ)を設けました。梶井門跡政所は大原に住む行者を取り締まり、来迎院や勝林院などの寺院を管理しました。大原では、天台声明(しょうみょう)が盛んに行われていました。
皇族や摂関家の子弟が円融房歴代の住職を務めましたが、なかなか落ち着けず、京都のあちこちを転々としました。江戸時代、五代将軍徳川綱吉の時に、御所に近い公家町に寺領を与えられて、ようやく落ち着くことができました。
明治4年(1871)、大原の梶井政所の地に移転し、寺院の名も「三千院」と改めました。「三千院」は「一念三千」という天台宗の根本教理を表す言葉に由来します。「一念の心に三千の諸法を具えることを観ずる」という意味だそうです。
移転して三千院となった時に、天台宗とは関係のない極楽院を取り込み、後に「往生極楽院」と改称しました。
三千院の見どころ
境内の北側には宸殿と客殿があり、それを聚碧園・有清園の池泉回遊式庭園が囲んでいます。庭園はなめらかな青い苔(こけ)におおわれ、大きな杉の古木がそびえ立っています。モミジの木が多く、秋の紅葉は燃え立つほどにあざやかです。けれど、5月の輝く若葉、6月の雨を含む青葉も美しいものです。
南側の庭園は杉苔におおわれて、瑠璃(るり)光庭と呼ばれます。この中に往生極楽院があります。その名の通り極楽浄土を表した建物です。
往生極楽院の御本尊は阿弥陀三尊像です。中尊の阿弥陀如来(あみだにょらい)像は結跏趺坐(けっかふざ)していますが、脇侍(わきじ)の観音菩薩(かんのんぼさつ)と勢至(せいし)菩薩は日本風に正座して上体を前にかがめています。今にも悩める衆生(しゅじょう)を救おうというお姿です。
三千院をとりまく寺
三千院の近くには、いろいろなお寺があります。
- 来迎院
9世紀に最澄の弟子円仁が開いた天台声明の修練道場です。
本堂の阿弥陀如来・薬師如来・釈迦如来の三尊像は藤原時代の作と言われています。
- 勝林院
天台声明の根本道場として開かれました。
1186年、法然上人が他派の僧侶と宗論を戦わせた「大原問答」で有名です。
勝林院の塔頭としては、実行院と宝泉院が知られています。
実行院の「不断桜」は、秋から春にかけて花を咲かせる珍しい桜です。秋には、紅葉と桜が同時に楽しめます。
宝泉院の西の庭は「額縁庭園」として有名です。客殿の柱を額にして庭園を見るようにしてあります。書院の廊下の天井は「血天井」で、伏見城で自害した鳥居元忠一党の血がしみついています。
三千院へのアクセスは?
京都駅から京都バス17で約1時間、バス停大原で下車し10分ほど歩きます。
四条河原町からは京都バス16・17で約50分、バス停大原で下車します。
来迎院は三千院から呂川に沿って5分ほど歩きます。
勝林院は三千院から北へ2分ほど歩きます。
おみやげとランチ
おみやげなら、大原名物の紫蘇(しそ)を使ったおつけものやジャムです。
「富しば」は手作りジャムの店です。カボチャ・ユズ・アンズ・梅シソなど10種類以上。季節によってちがいます。一番人気はシソですね。
「志ば久」では、赤志ば・青志ばなど5種類の志ば漬けを作っています。他にも30種類のおつけものが店頭にならびます。串にさしたアイスキュウリは夏のおすすめです。
どちらもバス停から三千院へ行く途中にあります。
ランチなら、三千院石段下の料理旅館「魚山園」の大原女(おはらめ)弁当があります。あじさい膳は3000円くらいですが、1000円ほど加えると、天然温泉に入ることもできますよ。
関連ランキング:懐石・会席料理 | 京都市左京区その他 少し歩きますが、呂川沿いの食事処「呂川茶屋」の京野菜うどんもおすすめ です。
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三千院で温泉?
三千院前の大原温泉湯元「旬味草菜(しゅんみそうさい) お宿芹生(せりう)」は、合掌造りの宿屋です。どの部屋からもお庭がながめられます。食事は京野菜や山菜、川魚を使い、野趣にとんだ会席料理です。
お問合せは075-744-2301へお願いします。
三千院石段下の「魚山園」も温泉のある旅館です。
お問合せは075-744-2321へお願いします。
足をのばして大原寂光院へ
大原バス停から三千院とは反対方向に20分ほど歩くと、寂光院です。平清盛の娘建礼門院が、一族の菩提(ぼだい)をとむらいながら、ひっそりと暮らした寺です。
平家物語の「大原御幸」には、ついつい涙をさそわれます。